ノアコイン 仮想通貨が 力づけるフィリピン
フィリピン・日本暗号通貨金融フォーラム
日本のフォーラムで議論された仮想通貨が
力づけるフィリピン
仮想通貨、ブロックチェーン技術、そして金融技術分野における世界中の専門家たちが、フィリピンは仮想通貨に力を与えられた世界の最先端におり、東南アジアの次のフィンテックハブになるのも時間の問題と確信している。
ノアファウンデーションの主催による初めてのフィリピン・日本暗号通貨金融フォーラムが、最近東京で開催された。フィリピン、オーストラリア、米国、日本から一堂に会したリーダーたちは皆、仮想通貨やブロックチェーン技術やフィンテックについて、人々の理解促進に取り組んでいる。
ノアファウンデーション役員のジョセフ・ワーカー氏は、これらの新たなテクノロジーを巡り高まる期待感と、一般への教育の必要性を考慮すれば、フォーラムの開催が必要不可欠だったと話した。
「このフォーラムは、専門家たちが一堂に会し、互いにパートナーとして知識を共有する、完璧な機会だったと感じました。出席者は仮想通貨、ブロックチェーン技術、フィンテックが人々の現在の生活に与える影響、そしてより重要な、将来の私たちの物事のやり方に与える影響について、最高の知識共有ができたと思います」と、ワーカー氏は語った。
仮想通貨とブロックチェーン技術の専門家で、サトシ シタデル インダストリーズ (SCI) 社の共同創業者兼最高コミュニティー担当役員のミゲル・アントニオ・クネータ氏は、ビットコインとブロックチェーン技術を「お金のインターネット」と呼び、インターネットがかつて通信・メディア・出版業界に与えたのと同じ影響を、金融・ガバナンス・銀行サービスに対し及ぼそうとしていると指摘した。
「ビットコインは技術プラットフォームであり、単なる通貨ではありません。それは投資の仕組みでも、もちろん一攫千金の仕組みでもありません。新たな種類のテクノロジーであり、この技術が成功を収めれば、誰もが使える公共の道具になります。つまり、技術は人々が問題を抱え、それを解決したいと考える時に発生するのです」と、クネータ氏は言う。
未来について語りながら、クネータ氏はビットコインが取り組む問題について、その概要を示
した。
「二重支払い問題は、私たちがデジタル技術を使い始め、相互に取引したいと考えた時に発生した、古くからあるコンピューター科学の問題です。何かを電子的手段で送る時、その対象物とそっくりのデジタルコピーを無制限に作り出すことができます。誰も、コピーの互いの違いを見分けることはできません。デジタルマネーの送金において、どのようにすればそのお金が偽物ではないと分かるでしょうか? そこで生まれたソリューションが、中央集権的な第三者を作り出し、取引を検証することでした」と、クネータ氏は説明する。
クネータ氏によれば、SCI社の開発した送金プラットフォーム、モバイルマネー、取引所プラットフォーム、決済プラットフォームに使用されている技術は、お金儲けや、お金の取引管理だけを目的とするものではないと言う。
一方、Coins.ph社のロン・ホース創業者兼CEOは、銀行がこの新たなテクノロジーを取り入れれば、すぐにそのメリットを活用できると話した。
「銀行の未来は、消費者と金融サービスを直接結びつける方向に進んでいます。私たちは既存の金融機関に取って代わろうとはしていません。金融機関がもっと多くの消費者にリーチできるよう、協力しようとしているのです。私たちはこれまで極めて順調に進んでおり、すでに登録顧客数は300万人を超えています。その他にも多くの優秀なプレイヤーと、提携関係を結んでいます」と、ホース氏は付け加えた。
ホース氏は、利便性と包摂性、そしてあらゆる人が当然のこととして同じ質のサービスを受けられるようにすることが、この分野でのイノベーションを推進すると強調した。
未来の技術に基づく銀行サービス
フィリピンのデジタルバンキング界のリーダーとして著名な、ユニオン銀行のジャスト・A.オルティズ頭取は、銀行サービスの中には依然として、対処すべき大きなギャップが存在すると語った。同国における非電子取引の割合は現在99%にも達しており、オルティズ氏によれば、銀行業界は2020年までに、電子取引の比率を20%に上げようとしている。
店頭で行われる従来のビジネスと、デジタルが主流の電子商取引の間には、非常に大きな断絶があるにも関わらず、デジタルへの転換は予想よりも速く進むとオルティズ氏は予測する。また、オルティズ氏は、銀行サービスにおいて変わりつつある風景に対し、フィリピンの中央銀行当局が積極的に順応しようとしていることを称賛した。
オルティズ氏によれば、フィリピンの中央銀行はブロックチェーン技術が急速に発展していることを認識しており、3年の時間枠でその技術的変化への対応に取り組んでいると言う。
「私たちのように主流で活動する人や組織にとって、それが単なる学習に過ぎないとしても、流れに乗ることが重要なのです。もし乗り遅れ、ユニオン銀行のエドウィン・ボーティスタ社長の言葉を借りるとすれば、「完璧な状況が現れる」まで待っていたら、完璧な競争に巻き込まれ
てしまうでしょう。だから私たちは待っていられないのです。前進し続けなければなりません」と、オルティズ氏は話した。
ユニオン銀行のフィンテック事業グループを指揮するラモン・ヴィセンテ・V・デ・ベラ氏は、喫緊の課題は銀行の旧式なシステムであると指摘する。銀行のシステムはその設計上、金融業界において排他的な状況を生み出しており、そのため多くの企業が参入を見送らざるを得ず、大きな不公平を生み出していると言う。
「当行は今、ブロックチェーンベースのネットワークを構築しています。当グループの地方銀行を、ブロックチェーンネットワークの中に組み入れるつもりです。それが実現すれば、資金を互いにリアルタイムで送金し合えるようになります。このネットワークにより、地方の銀行とその顧客は、共通のプロダクトや銀行サービスを利用できるようになるでしょう。同時に、遠方の地域にある地方銀行はその店頭を、銀行や銀行以外の金融機関に提供することもできるようになります。それが、当行の作り上げようとしているビジョンです」と、デ・ベラ氏は説明した。
「さらに重要なのは、ブロックチェーンは地方銀行を結びつけるだけではなく、その業務プロセスの効率化にも寄与します」と、デ・ベラ氏は言い、この技術は3,000行から480行にまで減ってしまった地方銀行が生き残るための、解決策となり得ると付け加えた。
「ブロックチェーン技術がアジアに浸透し始めていること知り、嬉しく思います。私たちは今、イノベーションとチャンスの中心にいるのです」と、デ・ベラ氏はさらに述べた。
金融テクノロジーの未来
FINTQ社の業務執行役員で、FinTechAliance.ph社の会長でもあるリト・ヴィラヌエバ氏は、急成長している金融テクノロジー (フィンテック) について、いくつかの会議で銀行の幹部たちと議論した時、彼らが金融テクノロジーは銀行業界を「混乱させる存在」であると決めつけたエピソードを紹介した。
ヴィラヌエバ氏はこの3年間で、フィンテックの受け入れが拡大するのを目の当たりにしてきた。彼の会社はすでに、100以上の銀行や銀行以外の企業と、提携関係を構築している。
FINTQ社は、金融包摂の実現は、フィリピンにおけるイスラム教徒コミュニティーの協力なしには、成し遂げることができないと認識している。
「それ故に当行は、銀行口座を持たないイスラム教徒の同胞向けに、イスラム法に準拠したデジタル マイクロファイナンスの枠組みを提唱しているのです」と、ヴィラヌエバ氏は述べ、低い銀行口座保有率の問題も、フィリピンの貧困層はもちろん、低・中間所得層の国民にも影響を与えていると指摘した。事実、同国の地方自治体の約36%には、銀行さえ存在しない。
幸福な生活を目指して
スタートアップ企業サラリアム社のジュダ・ハーシュ創業者兼CEOによれば、ブロックチェーン技術と仮想通貨は、給料や手当の支払いでも使われようとしている。
「ブロックチェーン技術により、私たちは従業員とそのメリットを共有することができます。会社は従来の現金払いを含む、従業員が望む方法で給料を支払うことができるようになります。また、会社が報酬プログラムを用意し、従業員にデジタル商品券やSALPayトークンを与えることもできます」と、ハーシュ氏は説明した。
「当社はイニシャルコインオファリングを、ちょうど終えたばかりです。これからはグループ会社のいくつかで、従業員の給料を、ブロックチェーンを通して支払ったり、仮想通貨で支払うことができます」と、ハーシュ氏は付け加えた。
ハーシュ氏はSALPayについてさらに取り上げ、同社従業員の給料は、今では電子バンキングサービスを通して支払われており、従業員はデジタルに整理された仕組みの中で、資金を管理することもできると説明した。
健康産業の第一線で活躍するWELL社のイダル・ファズリーノフ創業者兼CEOは、ブロックチェーン技術が実際に命を救うことになるかもしれないと話した。
「米国だけでも、医療ミスが原因で25万人が亡くなっています。世界的に見ると、この死亡数は毎年約500万人増加しています。もし誤診や治療未実施も原因として加えるならば、世界の人口の40~50%が (適切な) 医学的治療を受けていないという数字も、議論の余地があります」と、ファズリーノフ氏は話した。
ブロックチェーン技術は、主に医療業界の信用向上において、大いに役立つ可能性がある。
「ブロックチェーンは信用をベースにしています。医療における最も大きな問題の1つは、医者によりミスが隠されてしまうことです。ミスの隠蔽により、致命的な状況が引き起こされる可能性があります。ブロックチェーンを使えば、そのような問題の解決に取り組み始めることができます」と、ファズリーノフ氏は語った。
北サンボアンガ州第一区のセス・フレデリック・P・ハラショス下院議員は、ブロックチェーン技術と仮想通貨、そしてミンダナオ島の自身の選挙区に対するノアファウンデーションの関心を歓迎した。同選挙区のダピタン市には、豪華なダカックビーチリゾートがある。
「ミンダナオ島はこの新たなテクノロジーにとって、完璧なプラットフォームになります。私たちはスポンジのようなものです。新しいアイデア、新しいテクノロジー、新しいプロジェクトに対して、私たちはとてもオープンです。ミンダナオ島の発展に関する話なら、何でも大いに受け入れます」と、ハラショス氏は述べた。
ハラショス氏がいわゆる帝国主義的マニラに頼らず、ミンダナオ島の開発を支持しているのは、そのような理由からだ。
「私たちはフィリピンで最も放っておかれた島という汚名から脱するために、そのような新しい何かに対し、とても飢えているのです。新しい技術は、私たちの国に大変革をもたらしてくれると考えています」と、ハラショス氏は話した。
ノアファウンデーションのワーカー氏は、ダカックビーチリゾートは、仮想通貨「ノアコイン」
のサービスを展開する、最初の場所として選ばれたと指摘した。
「日本の旅行者がダカックを訪れた時、円やペソを持っていなくても、ノアコインさえあれば何の心配も要りません。どんな支払も、ノアコインを使って行うことができます。また、ディスカウントを受けたり、無料の試供品をもらったり、現金での支払いでしか得られなかったような体験を楽しむこともできます」と、ワーカー氏は話した。
ワーカー氏は、ノアコインは香港のオクトパスカードから発想を得たとも説明した。オクトパスカードを使う旅行者は、店舗や公共交通機関、娯楽施設などで、保有するポイントを使うことができる。
「私たちは遥かに貧弱なインフラしかない地域で、このアイデアを適用しました」と、ワーカー氏は強調した。
ワーカー氏によれば、ダカックビーチリゾートは、ノアコインのサービス展開の、ほんの手始めに過ぎない。フィリピンの広大なプロジェクト「ホライゾンマニラ」では、ノアシティの建設も予定されている。
現在、ノアコインを持つことで恩恵を受けられるのは主に日本の旅行者だが、他の多くの国の人たちにもこの仮想通貨を使って買い物してもらえるよう、懸命に取り組んでいる最中であることをワーカー氏は話した。
「私たちの努力は、フィリピンの前向きなビジョンにしっかりと根ざしています。伝統的に目を向けられてこなかった地域が突然、世界経済の中に参加し、常に貧しかった人々は、家族を残して故郷を離れることなく、繁栄を経験することができるようになるのです」と、ワーカー氏は語った。
「仮想通貨によってこれまで以上に経済が拡大し、そのおかげ私たちはチャンスを生み出し始めています。その一方で、知識と安心感で未来をはっきりと描けるよう、誤った情報を一掃し、コンセンサスを作り上げることに尽力する必要があります」と話すワーカー氏は、仮想通貨がツールとなって忘れられたコミュニティーを救う確かな事例を、ノアコインが作り出すと確信している。
仮想通貨は定着した
ノアアークテクノロジーズ社 ラファエル・レイエス取締役
この3年間、仮想通貨やブロックチェーン技術を巡っては、さまざまな噂や、間違った情報が存在した。日本キャッシュレス協会の後援で最近開催された、フィリピン・日本仮想通貨金融フォーラムは、世界的な電子金融取引の「新しい標準」を評価したい国内外のメディアや一般市民に
とって、非常にタイムリーで好都合なイベントだった。
同フォーラムには、さまざまな状況の下で活躍する著名な講演者たちが登壇し、ブロックチェーン技術が銀行、送金サービス、医療、旅行、退職金制度、マーケティングサービス、小売・卸売販売から、B2B・B2Cまで、それぞれの業界でどのように利用できるのか、明確で説得力のある議論が行われた。
これまでずっと、金融・非金融両分野における世界中の多くの企業が、この新たなテクノロジーに惹きつけられてきた。そして単純に、このような疑問を持っている。「ブロックチェーン技術とは何なのか?」
これに対し、フォーラムは洞察に満ちた定義を示した。ブロックチェーンは、世界中のコンピューターネットワークにより生成される、取引の台帳のことである。それぞれの取引は電子署名が施されており、偽造することはできない。この成長を続けるテクノロジーは、一切の中央集権的な管理を置かずに金融取引を実行・記録する、新たな方法を生み出した。
ブロックチェーン技術は、その台帳システムが改ざんに強く、分散化されていることを理由に、徐々に魅力を高めてきた。仲介という手段を時代遅れの仕組みにすることで、この技術は即時決済や低い取引コストを実現している。
世界中の多くの中央銀行が、ブロックチェーン技術の出現を好意的な目で見ており、国の銀行サービス分野と非銀行分野を繋げ、経済成長を促す助けとなる可能性があると考えている。この技術を利用して、デジタル通貨を交換するためのプラットフォームは構築される。
一方で、分散型ブロックチェーン技術で作り出される多くのレイヤーは、金融取引の安全性をより高めることにもなるだろう。仮想通貨に関してはいくつかの制限が設けられているものの、私たちはブロックチェーン技術を中心として生まれたレイヤーが、最終的には、今日の現実通貨で見られるのと同じレベルの信頼性を作り上げるであろうことを学んだ。
金融・非金融分野の企業コミュニティーがブロックチェーンの利用可能性を探っているという事実は、この技術が定着したことを明らかに示している。仮想通貨は今後短期間の内に、世界中で金融取引の新たな標準になることが予測される。
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